第3章 市場戦略と市場構造

[市場戦略の理論5] 市場環境分析

市場を取り巻く環境の変化は、企業のマーケティング活動にさまざまな影響を与える。

環境変化の影響
 市場を取り巻く環境の変化は企業のマーケティング活動にさまざまな影響を与えます。こうした変化は企業による制御が困難なものが多いことから、十分な観察を行い、対応しなければなりません。主な環境変化について概括してみましょう。

景気変動
 景気は循環的に変動し、谷と山が周期的に巡ってきます。程度の差こそあれ、すべての企業は景気変動の影響から逃れることはできません。特に景気低迷時は、消費行動が慎重になるとともに価格競争が激化するといった企業経営にとってマイナスの作用が起こりやすく、注意を要します。

人口動態の変化
 市場は人で構成されていることから、その量的・質的な変化は企業活動に大きな影響を及ぼします。例えば、高齢化の進展に伴い、時間もお金もあるシルバー層が、従来の高齢者の枠組みを越えた消費活動により、豊かな市場を形成しています。また、少子化の進展は、子ども一人あたりに親が費やす金額を増大させ、教育や遊びの分野での消費ニーズを多様化・高度化させています。

価値観の変化
 人の価値観は消費行動にも影響を与えることから、特に消費財企業はこの変化に注目しなければなりません。昨今、モノの豊かさから心の豊かさへの変化が進展しているといわれますが、このことはモノ選びの基準にも大きな影響を与えることになり、企業はそれに応じた商品・サービスの提供を迫られることになります。このほかにも、「家族志向」「環境志向」「感覚志向」といった変化が進んでおり、消費行動にも影響をもたらすものとして注目されます。

その他の環境変化
 「規制緩和」の進展は、金融、通信、小売業などに大きな影響を与えてきました。「技術革新」は、消費ニーズに呼応すると、市場を根本的に変えてしまう影響力を持ちます。通信機能の極小化を成し遂げた携帯電話がその好例です。