社員コラム

調査の新アプローチ「RET」 【1】

執筆者:日本リサーチセンター 大滝 進一

記憶に頼らないリサーチ

 従来型のリサーチ手法の多くは回答者の記憶に頼ってきましたが、特に関心の低い商品や行動に関しては忘れてしまうことも多く、課題とされていました。そのような従来型のリサーチのデメリットを補完する方法として、記憶に頼らない、消費行動直後のリアルタイム性を重視した手法の1つ「リアルタイム・エクスペリエンス・トラッキング(RET)」が、注目を浴びています。今回は、RETの活用を解釈レベル理論の観点から、ご紹介したいと思います。

■RET 体験したその場で回答

購入予定の期間の違いによって商品の評価が変わる

近年、消費者行動研究の分野で、消費者と対象商品との心理的距離が遠い場合と近い場合とで、重視する商品属性が変化するという理論が注目されています(「解釈レベル理論」といいます)。例えば、遠い将来に必要となる商品を検討する場合、高性能や多機能といった本質的便益が高いことを重視した商品評価を行い、直近で必要になる商品を検討する場合には、使い勝手や価格といったより具体的な商品評価になると言われています。アンケートにおいては、調査対象に対して心理的距離が遠いと、調査設問を抽象的に理解したり、商品や購買行動について深く考えることなく回答したりしてしまう可能性が指摘されています。

 もちろん、弊社ではそのような状況でも心理的距離を近づけるためのノウハウがあるのですが、今回はその話は割愛させて頂き、「心理的距離」を把握しながら回答させる手法として、RETの概要と特徴についてご説明します。

RETの3つの特徴とは

RETとは、生活者の「体験(Experience)」を「リアルタイム(Real-time)」に「追跡する(Tracking)」手法のことで、例えば、一定期間、自動車に関連するタッチポイントに触れる度に手持ちのスマートフォンで、その時の気持ちなどを回答してもらう形をとります。
RETは3つの特徴があります。

 1つめは、心理的距離(購買までの時間的距離など)を把握しながら、体験直後にリアルタイムに回答してもらうことで、記憶が失われる前のその瞬間の新鮮な気持ちを捉えることができます。例えば、我々は通常、「問1 この商品について買いたいと思いますか?」のような唐突な設問は行わず、購買行動を時系列的に追うようにウォームアップ質問(解釈レベルの操作用の質問)を入れてから、本題の質問(購入意向等)を聞きますが、RETにおいては消費行動の文脈の中で調査を行うため、ウォームアップされた状態の回答を得られるのです。

 2つめは、RETはスマートフォンで行うので、写真のデータを取得するなど、回答(体験)のエビデンスを得ることができます。回答者は、例えばその写真を見ながら、事後に実施するアンケートにおいても、例えば購買の時のマインドを思い出して(心理的距離を近づけて)回答することが可能です。一方、リサーチャーはエビデンスがあることで、より客観的に分析することができますし、意識と実態の乖離から消費者の潜在意識を知ることもできます。

 3つめは、回答時間などから生活における文脈を捉えられることです。回答者が購買行動におけるどの段階にいるのかを把握することで、回答者のマインドがどの段階にあったのか(心理的距離が近いのか、遠いのか)を知ることができます。また、分析者は、気持ちの変遷や体験したシーン、生活の全体像など、回答者(顧客)のストーリーが見えるので、深く共感する(=顧客になりきる)ことが可能になります。
(続く)

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