社員コラム

調査の新アプローチ「RET」 【2】

執筆者:日本リサーチセンター 大滝 進一

リアルタイムだから分かった重要な「小さな体験」

 とあるファッションブランドを調査した際にこんな事例がありました。ある20代の女子大生の消費行動を追っていたところ、ショーウィンドウのサイクリング用のコーディネート例を見て、スポーツものは気になるとコメントしていました。しばらくトラッキングを続けていき、ついに購買までたどり着いた際には、明らかにその時のショーウィンドウのコーディネートの影響を受けていたのです。しかしながら、本人が回答した購入に影響したタッチポイントとして、ショーウィンドウのことは全く触れられていません。これは、購買時点においては、「使い勝手」や「価格」といった具体的なことに関心が移っており、ショーウィンドウの体験の重要性が低下していたことが考えられます。もちろん、マーケターにとってはショーウィンドウが購買へ導く重要な伏線となったという知見が得られたことは、言うまでもありません。

生活文脈の中で調査をすることが重要

生活文脈の中で調査をさせるべきという考えは、世界で最もイノベーティブな企業と言われるIDEO社も2003年に「Bringing Real World Context into the Focus Group Setting」と主張しています。当時はコストの問題が指摘されていましたが、写真や動画を簡単に活用できる環境になる中で、定量・定性問わず、生活文脈の中で調査を行うことを再評価する動きがあります。先の女子大生のショーウィンドウの例においても、後日、過去の日記を振り返りながらインタビューを行うことで、その時の記憶を鮮明に思い出すことができ、ショーウィンドウの潜在的な重要性を確認することになります。

スマホ時代の新しいリサーチの考え方

ウェブ調査においては、アンケート回答のデバイスとして、スマホが多くなってきたことで「Bonsai Survey」が必要(冗長な説明や設問をなくし、盆栽のようなアンケートをすべき)と言われています。もちろん、調査目的に照らして優先順位の低い設問は省くべきですし、説明は冗長でないほうが良いですが、消費行動から離れた環境で調査が行われているがゆえに切るべき枝葉も多くなっている可能性があります。消費行動に沿った文脈の中で調査を行うRETならば、数少ない質問から心理的距離を把握しつつ、リアルタイムな購買行動を把握することができます。Bonsai Surveyにならい、RETの3つの特徴を「リアルタイム性」=寿司、「エビデンス」=皿、「生活における文脈」=コンベアと捉え、これを「回転ずしアプローチ」と提唱したいと思います。つまり、生活文脈(コンベアによって流れる中でついつい手に取る)中で、記憶を裏付けるエビデンス(皿)とともに、新鮮な記憶(寿司)を取得する。そして、その後のインタビューやアンケートで、振り返る(記憶の自然解凍)。これはスマホ時代の新しいリサーチのアプローチと言えるのではないでしょうか。 了

お問い合わせ窓口

株式会社日本リサーチセンター
担当:広報室
お問い合わせ専用Eメール information@nrc.co.jp

関連リンク