NRCプレゼンス

シェアリングエコノミーの実態と今後
 〜消費者意識の変化とニーズを汲み取るサービスの予兆〜

シェアリングエコノミーという言葉が今非常にトレンドワードになっている。米国では市場規模も非常に大きくなっており、2020年以降日本国内でもグローバルでも市場が拡大していくと予想されている。
 シェアリングエコノミーの普及はITの精度向上とも比例する。人と人、人とモノのマッチングが一瞬でできるようになり、従来であれば出会うことのない人とマッチングする仕組みが整ったことが今注目されている背景にある。

消費者意識の変化とニーズを汲み取るサービスの予兆

講演者

樋口 進氏

樋口 進氏
株式会社シンクエージェント
代表取締役 主席コンサルタント

住友ビジネスコンサルティング株式会社(現日本総合研究所)にて、主に小売業(チェーンストア)の業態開発及びビジネス戦略、消費財メーカーのマーケティング戦略、カードビジネス戦略、大手製造業の新規事業開発戦略、商品開発コンサルティングなどを経験の後に独立

内容

シェアリングのバリエーションは昔からある。

レンタルビデオ、中古レコード、家政婦など昔からあった。長屋もシェアハウス。これらとの大きな違いは個人社会になり濃い人間関係がなくなった中で、ITを使ってマッチングをうまく作り危険を防止したり保証したりする仕組みをそこにつけたこと。加えて、それを大企業が仕切るのではなく、大企業はあくまでも仲介に徹しボトムアップで市場を広げる役割をする。つまり、オンラインでつながることで、短時間で知らない人同士を的確にマッチングし、効率的な共有資源を持てるようになったのがシェアリングエコノミーである。

シェアリングエコノミーの領域は、7つほど考えられる。

1)空間のシェア…いわゆるルームシェア、民泊。コワーキングスぺースは非常に増えている。他にゲストハウス、グランピングスペースなど。  2)モノのシェア…カーシェアがかなり先行した。「メルカリ」も伸びた。最初はバッグのレンタルが多かったが今はエアクローゼットが伸びている。  3)スキルのシェア…専門性の高いジャンルから普及している。例えば、カメラマンマッチングなどは非常に伸びている。  4)作業のシェア…専門性というよりは普通の主婦の人、パートしかしていない人などが自分の空き時間を使って副業をする領域。カジタク、アズママ、オフィスオカンなどが代表的なサービス  5)移動手段のシェア…ライドシェアが本命。自転車のシェアサイクリングも盛ん。車は自動運転、保険制度の整備など法的、かつ安全性の問題をどのように明確にしていけるかで今後の伸長が変わる。  6)サービスのシェア…モノを保管しそのモノを写真に撮っていつでも確認できるサービス。預かったモノを完全にデータベース化できるので、商品提案などにもつなげられる。また、買取サービスもこの分野に含まれる。  7)時間・場面共有…パブリックビューイングが代表例。

所有より時間を有効活用したいという考え方がシェアリング利用の背景にある。

消費者はシェアリングエコノミーに、やはり安価であること。所有せずに借りることでその時一番流行っているものの良さを享受したり、一番楽しい部分だけ手にできたりすることを期待している。一方で、安全性、お金のトラブルへの不安感かなりある。  昔は紙の手続きが面倒だったが今はネットで入力すれば自動マッチングしてくれる。この敷居の低さは普及の大きな要因である。

日本でのシェアエコノミーの普及にはクリアすべき問題がある。

米国では非常にシンプルに割り切った形でシェアリングエコノミーがスタートアップした。しかし、狭い国土と多様な地域の問題を抱えている日本では、細かいアプリケーションのチューニングが必要となる。単に「シェアしますよ」だけではうまくいかない。  例えば、サービス品質保証、セキュリティ、トラブル対策などは日本の場合とても敏感。である。

生活者データをシェアリングする時代へ:企業間のデータ流通フレームの試み

講演者

小口 裕氏

小口 裕氏
株式会社日本リサーチセンター
R&Dラボ チームリーダー

エネルギー専門商社(営業・事業開発)、電機メーカー(情報システム)、コンサルティング(商業開発・中心市街地活性化など)を経て、2008~:日本リサーチセンターに在席。
事業開発本部リサーチ&ディベロップメント(R&D)として、デジタルエコシステム、データ流通などに着手

内容

データそのものより、そこから産まれた事業・商品・サービスが価値を生む。

生活者のデータを収集し、それを処理加工して流通させる。つまり、市場なり自社とは異なる主体にデータを提供することによって新たな価値創出を目指す活動がデータ流通であると私は考えている。  データのシェアリングというのは流通させることによって対価が発生するというよりも、むしろそこでデータを介して生み出された事業や商品サービスに対して対価が発生するものである。同じシェアリングといってもここが少し違ってくるのではないかと感じている。従ってデータ流通市場は単なるトレーディングの機能だけではなく価値創出や共創、新しい商品やサービスを生み出す機能が実装されていないとうまくシェアリングが機能していかないということが実感としてもある。

貸し手が拡大していかないとデータ流通は拡大していかない。

自分のデータを貸したいというニーズを実現させるために政府・行政、民間が基盤の整備などの取組みをしている。データ流通はまずデータの貸し手が拡大しないとそもそも流通が行われない。それに応じて借り手が拡大する。借り手がデータを利活用することで、新しい商品・サービスを生み出す情報やノウハウが拡大し、最終的に価値創出に結びついていく。

データ流通では個人情報の問題は常についてまわる。

消費者として、シェアリングのサービスを利用する時に自分のデータがどう使われるかという合意は必ずすることになっている。しかし、その後実際にどう使われているのかは実質よくわからない。この気持ち悪さは常にある。データを活用する側も、データをひとりひとりに同意取得を得ながら全部統合するのは事実上不可能。データを統合して活用したくても実質的に無理という限界もみえる。したがって、情報銀行のような仲介企業がクローズアップされている。

価値創出というゴールが見えないとデータはうまく流通しない。

価値創出に向けていろいろな取り組みが試みられている。データ流通市場は単なるトレーディングの機能だけではなく価値創出や共創、新しい商品やサービスを生み出す機能が実装されていないとうまくシェアリングが機能していかない。そのためには、生活者の目線に立って、何をデータでドリブンするかという議論が重要。IoTの時代となり、オンラインの世界から、リアルなハードウェアに投資がシフトしていく。データ流通をめぐる活動を通して、小さく実験するという意味でリサーチデータの価値が見いだされつつある様に感じている。

お問い合わせ窓口

株式会社日本リサーチセンター
担当:広報室
お問い合わせ専用Eメール information@nrc.co.jp