第10章 消費者意識と購買行動

[購買行動5] 感性(記号)消費

好きか嫌いかで消費行動を決定する感性消費。求められるのは、商品の「記号としての価値」。

感性消費とは
 消費者の人並み意識が薄れ、個性化・多様化・分散化傾向が強まる中、モノを購入する時の判断基準は、その商品が「良いか悪いか」という理性的な基準に基づいて行われないケースが増えています。それよりも、自分がその商品を「好きか嫌いか」という感覚的な価値判断によって、消費行動をとる場合が増えているのです。このように、感覚的な判断基準で購買を決定することを、「感性消費」といいます。

記号としての価値
 「好きか嫌いか」という軸で消費行動をとる場合、商品に求められるのは機能性だけではなく、シンボル性・記号としての価値が重要となります。高価なブランド品の購入者にとっては、その商品の象徴的な価値や、それを身に付けたりすることによって得られる満足感・優越感を計算に入れると、十分納得のいく合理的な行動となるのです。

感性消費の商品ジャンル
 感性消費の主な商品ジャンルは、これまでは嗜好性・趣味性が強く、プライベート使用よりも人目に触れる場で使用する機会が多いもの、と考えられてきました。例えば、洋服やカバン、化粧品、食品、腕時計、車などの商品群が該当します。しかし、最近では、寝具や冷蔵庫、タンスといった、これまで感性消費の対象とされにくいといわれてきた商品群においても、生活雑貨的な感覚で購入されるケースが目立ってきました。

感性消費の中心層
 こうした感性消費を支えているのは、当然のことながら、趣味性、嗜好性、そしてファッション性に富んだ商品に対して敏感な若年層や女性ですが、最近では、中高年層においても同様の傾向が強まっています。マーケティング戦略を立てる際には、特にこうした層への留意・配慮が必要といえます。