NRCレポート

ユニバーサルデザイン理解・浸透度定点観測調査
~「障害の社会モデル」は日本社会にどこまで浸透しているか~

第1回調査(2017年11月調査結果)
生活・ライフスタイル

公表日 2018年10月16日

日本リサーチセンター(本社:東京都中央区、代表取締役社長:鈴木稲博)は、1960年に設立された民間の調査研究機関であり、民間企業および官公庁、大学をはじめとする学術機関などの依頼を受け、各種の調査研究をおこなっています。
 このたび、当社の自主調査として、「ユニバーサルデザイン理解・浸透度定点観測調査 ~『障害の社会モデル』は日本社会にどこまで浸透しているか~」を企画・実施しました。

調査実施の背景と目的

  •   2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として、世界に誇れる水準でユニバーサルデザイン化された公共施設・交通インフラを整備するとともに、心のバリアフリーを推進し、それを大会以降のレガシー(後世に残され、未来に引き継がれる財産)として残していくために、20172月、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」が策定されました。

      「ユニバーサルデザイン」 とは、障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず、多様な人々が利用しやすいようあらかじめ都市や生活環境をデザインする考え方です。

      たとえば、建物の入口に段差があったら、つまずいたり、段差を乗り越えられない人もでてきます。しかし、最初から段差があると生じる問題を考えて段差のない設計にしていればこうした問題はおきません。段差を乗り越えられない状況は、つまずく人・乗り越えられない人の側の問題ではなく、段差のある建物をつくり、そのまま放置している社会の側に原因があると言えます。

      「ユニバーサルデザイン2020行動計画」は、このユニバーサルデザインの考え方に基づく共生社会の実現を目指してとりまとめられています。すなわち、日本社会は、「障害の有無にかかわらず、女性も男性も、高齢者も若者も、すべての人がお互いの人権や尊厳を大切にし支え合い、誰もが生き生きとした人生を享受することのできる共生社会を実現すること」を目指しています。そのためには、社会全体が障害への関心を高め、「障害は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によってつくり出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である」という「障害の社会モデル」をすべての人が理解し、意識に反映させ、具体的な行動に結びつくまでに浸透させることが重要です。

      当社は、内閣官房「平成28年度オリンピック・パラリンピック基本方針推進調査(ユニバーサルデザインの社会づくりに向けた調査)」に調査事務局として参画しました。この事業は、ユニバーサルデザインの社会づくりに向けた試行プロジェクトを公募して実施し、効果や改善点を調査・分析するものでした。この事業を通じて、現在の日本社会では、障害の理解及び「障害の社会モデル」の理解・実践はまだ十分なレベルに達しておらず、それを社会に浸透させていくことが喫緊の課題であることが明らかになりました。

      現在、オリンピック・パラリンピックの開催される2020年に向けて、全国各地で、「心のバリアフリー」を広める取り組み、誰もが安全で快適に移動できるユニバーサルデザインのまちづくりが加速化しています。そうした中、「障害の社会モデル」の考え方がどの程度人々に理解・浸透しているかを把握することは、ユニバーサルデザイン社会の到達度を知るためのバロメーターになります。

      そこで当社では、一般市民を対象とした調査を行い、「障害の社会モデル」の考え方の理解・浸透実態について、2017年から2021年までの各年変化を明らかにすることで、調査会社として、共生社会実現の機運醸成に貢献できればと考えました。

      2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会を契機に「障害の社会モデル」の理解・浸透が進めば、我が国の共生社会実現という東京大会のレガシーを証明するものになると考えます。

主な調査項目

  • 「障害」に対する意識実態

     ・「障害」をどう捉えているのか 「障害の医学モデル」~「障害の社会モデル」

     ・「障害者」に対する感情(保護主義・同情等のステレオタイプ発想の残留状況、交流意思・距離感)

     ・社会のあり方に関する考え(共生社会、ユニバーサルデザインに関する態度・必要性認識)

    社会的障壁に対する行動(具体的なシチュエーション例に対する行動イメージ) 

     ・関与 ⇔ 非関与・無関心、「社会的障壁」への気づきと除去行動の有無  

    共生社会実現度合の認識 

調査結果の要約

    •  共生社会推進、ユニバーサルデザインのまちづくり推進に賛同する人は、全体で8割を超える。

    •  障害の社会モデル=「障害は、個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によってつくり出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である」という考え方に賛同する人は、全体の62.8で、過半数を占める。

       しかし、障害の社会モデルに賛同するが、障害の医学モデル=「障害は、病気や外傷等から生じる個人の問題であり、障害の原因を除去・対処するには、治療や訓練等もっぱら個人の適応努力が必要である」 には賛同しない人は、全体で35.8%に絞られる。
       そのうち、「障害のある人は一方的に助けられるべき存在だと思う」と「障害のある人はかわいそうだと思う」というステレオタイプを持たない人は、全体の13.9%。さらに社会的障壁遭遇時に「車いすや乳幼児連れの人は混雑した場所に来ないほうがよい」、「車いすや乳幼児連れの人専用の買い物エリアや通路、時間帯などを設けるのがよい」といった分離発想に賛同しない人(障害の社会モデルの獲得者)は、全体で7.1%と少数にとどまる。
       このように、障害をめぐっては、障害の社会モデルに賛同する人の中にも、医学モデルの考え、ステレオタイプ、分離の発想が入り混じった状況が多くみられることが明らかとなった。

       社会的障壁に接した場面での行動イメージ(複数回答)については、「混雑時は、店側がお客様を順番に少しずつ店内に誘導するなど、誰もが買物できるようにすべき」(45.1%)、「狭い通路の売り場をつくらないようにするべき」(42.3%)がともに4割超で、ソフト・ハード両面での解決策が上位となっている。
       
      次いで高いのは「車いすや乳幼児連れの人専用の買物エリアや通路、時間帯などを設けるのがよい」(35.1%)で、「分離」という共生社会・ユニバーサルデザインに反する方法を選ぶ人が3割以上と多かった
       
      「店舗の環境づくりの不備・改善点を気づいたら、気づいた自分が店舗に提案・要求していく」という社会的アクションに踏み込んだ回答は、全体で10.0%。障害の社会モデルの獲得者(グループO)でみても10.6%であり、全体結果と差異がない。障害の社会モデルの理論と行動にはまだ大きな隔たりが存在していることがわかる。

       日本の社会において共生社会が実現されていると考えられる度合を「0:全く実現していない」~10:完全に実現している」で評価を求めた結果、201711月時点での日本の共生社会実現レベル(平均値)は、10点満点中4.0と低い。

    • ※共生社会に向けた研究に関しては、無料で調査データを提供いたします(調査結果を引用等でお使いいただく場合には、当社名の記載をお願いします)。

調査概要

調査方法
 NOS(日本リサーチセンター・オムニバス・サーベイ:毎月1回定期的に実施する乗り合い形式の全国調査)調査員
 による個別訪問留置調査
調査対象
 全国の15〜79歳男女個人
有効回収数
 1,200人(サンプル)
 ※エリア・都市規模と性年代構成は、日本の人口構成比に合致するよう割付実施
サンプリング
 毎月200地点を抽出、住宅地図データベースから世帯を抽出し、個人を割り当て
調査期間
 2017年11月2日~11月14日

調査レポート


詳細は、下記PDFファイルをご参照ください。

ユニバーサルデザイン理解浸透度調査2017_結果レポート.pdf

調査票及び単純集計結果(テキスト形式).pdf

参考資料

NOS(日本リサーチセンター・オムニバス・サーベイ)とは


調査パネルを使ってインターネットで簡単に情報収集できる時代になりましたが、NOSでは、45年にわたって、
(1)調査員を使った訪問留置
(2)パネルモニターではない毎回抽出方式
で調査を継続しており、代表性のある信頼の高いデータを提供しております。
NOSは、毎月1回定期的に実施する乗り合い形式(オムニバス)の調査です。毎回ランダムに決められた200地点にて、対象となる方に調査員が協力を依頼してアンケートを回収します。性年代構成を日本の人口構成比に合わせているため、全体結果は日本を代表する意見として、そのままご覧になることができます。インターネット調査では、回収が難しい60代以上の対象者やインターネットを使っていない人の実態や意識を分析するのにも有用な手法と言えます。


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