NRCレポート

ユニバーサルデザイン社会の実現度 定点観測調査

第4回調査(2020年10月調査結果)~障害の社会モデルは日本社会にどこまで浸透しているか~
時事・トレンド 生活・ライフスタイル

公表日 2020年12月21日

日本リサーチセンター(本社:東京都、代表取締役社長:鈴木稲博)は、1960年に設立された民間の調査研究機関であり、民間企業および官公庁、大学をはじめとする学術機関などの依頼を受け、各種の調査研究をおこなっています。
 この度、当社の自主調査として、「ユニバーサルデザイン社会の実現度 定点観測調査 ~障害の社会モデルは日本社会にどこまで浸透しているか~」第4回調査を実施し、その結果概要をまとめたレポートを発表いたします。

調査実施の背景と目的

 オリンピック・パラリンピック東京大会に向けて、全国各地で心のバリアフリーを広める取り組み、誰もが安全で快適に移動できるユニバーサルデザインのまちづくりが進みつつあります。弊社では、この間の人々の意識の動き、社会の動きをキャッチし、社会の記録として残していきたいと考え、2017年から大会開催翌年までにわたる定点観測調査を企画しました。

 調査を通じて、「障害の社会モデルの考え方は日本社会にどこまで浸透していくのか」、歴史的なイベントである「2020年東京大会はユニバーサルデザイン社会の実現というレガシーを残すことができるのか」ということを明らかにしていきたいと考えます。

 2020年は新型コロナウィルス感染症拡大により、東京オリンピック・パラリンピック競技大会は2020年の開催が延期となりました。そのため、定点観測調査も、大会開催1年後までに延長し実施する予定です。

 

  • ユニバーサルデザインとは・・・障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず、多様な人々が利用しやすいようあらかじめ都市や生活環境をデザインする考え方です。
  • 障害の社会モデルとは・・・障害は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によってつくり出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるとする考え方です。この障害の社会モデルの考え方が人々にどの程度理解・浸透しているかを知ることによって、ユニバーサルデザイン社会の到達度を知ることができると考え、調査設計しています。

 

 

主な調査項目

  • 1.障害理解の実態
    (社会のあり方に関する考え、障害・障害者に対する意識、障害の医学モデル・障害の社会モデルへの賛同状況)
  • 2.社会的障壁に接した場面での行動イメージ

  • 3.共生社会実現度合評価 

 

主な調査結果(主要部分抜粋)

●障害理解の実態

要旨:
ユニバーサルデザイン社会を実現しようとする人々の意識、心のバリアフリー意識は、2017年から2018年に一定程度の高まりを見せたあと、2019年以降減少(逆U字型カーブ)

2017年以降の4年間で一貫した変化が見られたのは、「障害のある人は一方的に助けられるべき存在だと思う」とのステレオタイプへの賛同率減少のみ

 

【2020年の結果】 (そう思う計)

  • 社会のあり方に対する考え:
    共生社会推進への賛同率(障害の有無にかかわらず、女性も男性も、高齢者も若者も、すべての人がお互いの人権や尊厳を大切にし支え合い、誰もが生き生きとした人生を享受することのできる共生社会を実現すべきだと思う 91.1%)、ユニバーサルデザインのまちづくり推進への賛同率(障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず、多様な人々が利用しやすいよう、あらかじめ都市や生活環境をデザインすべきだと思う 85.2%)は8割半~9割と高水準。
  • 心のバリアフリー:
    障害者への援助行動(障害のある人が困っているときには、迷わず援助できる 72.9%)、仲間に入れることに抵抗感なし(障害のある人を自分たちの仲間に入れることに抵抗感はない 69 .1%)はともに7割前後と高い。
    障害問題への無関心者は約1割(障害の問題は、自分にはかかわりがない 9.6%)。
  • 障害者に対するステレオタイプ:
    「障害のあることはかわいそうだと思う」(41.9%)、「障害のある人は一方的に助けられるべき存在だと思う」(36.2%)といった障害者に対するステレオタイプを持つ人は3割半~4割程度。
  • 障害の捉え方:
    障害の社会モデルへの賛同率(障害は、個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によってつくり出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である 60.3%)は6割である一方、障害の医学モデルへの賛同率(障害は、病気や外傷等から生じる個人の問題であり、障害の原因を除去・対処するには、治療や訓練等もっぱら個人の適応努力が必要である 28.1%)は約3割。
  •  

2017年~2020年への時系列変化】 

ユニバーサルデザイン社会を実現しようとする人々の意識、心のバリアフリー意識は2017年から2018年に一定程度の高まりを見せたあと、2019年から2020年にかけて減少した(逆U字型カーブ)。

2017年以降の4年間で一貫した変化が見られたのは、「障害のある人は一方的に助けられるべき存在だと思う」とのステレオタイプへの賛同率の低下のみにとどまった。

 

図1.png

●共生社会の実現度合評価

(0点(全く実現していない)~10点(完全に実現している)スケール)

要旨:共生社会が実現しているとの認識は、2017年以降の4年間を通じて低いまま推移し、ほとんど変化せず

 

2020の結果】 

2020年の日本の共生社会実現レベル(平均値)は10点満点中4.2点

    • 中央(5点)よりも低い採点者が半数強を占め(0~4点計52.7%)、多くの人が、2020年時点の日本には共生社会が実現できていないと考えている。

    2017年~2020年への時系列変化】 

      • 日本の共生社会実現レベル(平均値) は、2017年・2018年はともに4.0点、2019年4.1点。2020年4.2点。
        4年間を通じて、共生社会が実現しているとの認識は低いまま推移し、ほとんど変化していない。

     

    図2.png

     

    調査概要

    調査方法
     NOS(日本リサーチセンター・オムニバス・サーベイ:定期的に実施する乗り合い形式の全国調査)
     調査員による個別訪問留置調査
    調査対象
     全国の15〜79歳男女個人
    有効回収数
     1,200人(サンプル)
     ※エリア・都市規模と性年代構成は、日本の人口構成比に合致するよう割付実施
    サンプリング
     全国から200地点を抽出、住宅地図データベースから世帯を抽出し、個人を割り当て
    調査期間
     2020年10月2日~10月14日

     

     

    ■詳細は、下記レポート(PDFファイル)をご参照ください。

    ユニバーサルデザイン社会の実現度定点観測調査_第4回(2020年)結果レポート.pdf

    <参考:障害についての意識やユニバーサルデザイン、共生社会関連の日本リサーチセンターの自主調査>

    ユニバーサルデザイン調査2019_ユニバーサルデザインのまちづくりはどの程度進んでいると考えられているか_レポート.pdf

    2019年障害のある人の政治参加と就労・就学に関する調査レポート.pdf

    ユニバーサルデザイン社会の実現度定点観測調査_第3回(2019年)中間レポート.pdf

    ユニバーサルデザイン社会の実現度定点観測調査_第2回(2018年)調査レポート.pdf

    ユニバーサルデザイン理解浸透度定点観測調査_第1回(2017年)調査レポート.pdf



    NOS(日本リサーチセンター・オムニバス・サーベイ)とは


    調査パネルを使ってインターネットで簡単に情報収集できる時代になりましたが、NOSでは、50年にわたって、
    (1)調査員を使った訪問留置
    (2)パネルモニターではない毎回抽出方式
    で調査を継続しており、代表性のある信頼の高いデータを提供しております。
    NOSは、定期的に実施する乗り合い形式(オムニバス)の調査です。毎回ランダムに決められた200地点にて、対象となる方に調査員が協力を依頼してアンケートを回収します。性年代構成を日本の人口構成比に合わせているため、全体結果は日本を代表する意見として、そのままご覧になることができます。インターネット調査では、回収が難しい高齢層やインターネットを使っていない人の実態や意識を分析するのにも有用な手法と言えます。

    ※ご依頼・ご相談は、ホームページの「お問い合わせ」よりご連絡ください。

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