NRCレポート

2020東京大会は何をレガシーに刻んだのか

日本リサーチセンター自主調査(2022年8月調査結果より)
時事・トレンド

公表日 2022年11月17日

日本リサーチセンター(本社:東京都、代表取締役社長:杉原 領治)は、1960年に設立された民間の調査研究機関であり、民間企業および官公庁、大学をはじめとする学術機関などの依頼を受け、各種の調査研究をおこなっています。
 2021年夏、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響による1年の延期を経て、オリンピック・パラリンピック東京大会が開催されました。東京都に緊急事態宣言が発令されている中での開催となった同大会は、開会式をはじめほとんどの競技が無観客で行われるなど、異例の大会となりました。
 2020東京大会では、「すべての人が自己ベストを目指し(全員が自己ベスト)」、「一人ひとりが互いを認め合い(多様性と調和)」、「そして、未来につなげよう(未来への継承)」 の3つが基本コンセプトとされました。そして、「オリンピック競技大会の有益な遺産を開催国と開催都市が引き継ぐよう奨励する」とするオリンピック憲章に沿って、本大会では、「大会を通じた日本の再生」、「日本文化の魅力の発信」、「スポーツ基本法が目指すスポーツ立国の実現」、「健康長寿・ユニバーサルデザインによる共生社会の実現」の4つのレガシー(開催を契機として次世代に継承していく有形・無形の社会遺産)の獲得が目標に掲げられました。
 大会から約1年。人々は、2020東京大会をどのように見、レガシーをどのように評価したのでしょうか。日本リサーチセンターでは、2022年8月に全国調査を実施しました。その結果をご紹介いたします。

質問紙

調査では、内閣官房東京オリンピック競技大会・ 東京パラリンピック競技大会推進本部事務局発行の『大会を契機とした取組とレガシー』に整理されている7つの取組・16の項目に沿って、「向上・発展したと思うもの」を尋ねました。

大会を契機とした取組とレガシー~TOKYO 2020~

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調査結果1. 大会の成果として向上・発展したと思うもの

2020東京大会のレガシーとして、スポーツを楽しむこと、コロナ禍でのスポーツイベント開催モデル(新たな観戦スタイル、感染症対策)をつくったことに一定の評価は集まるも、そのほかの領域は低評価にとどまる。

取組領域の中では、「スポーツを楽しむこと」が約4割(39.6%)であるのに次いで、「最新技術を活用した新たな観戦スタイル(リモート応援等)」(20.5%)、「大会実施に向けた新型コロナウイルス感染症対策」(18.8%)が2割前後でそれに続く。一方、「向上・発展したと思うものはない」との回答率は33.4%と3割を超えており、そのほかの13項目はいずれも14%未満で、評価が高い項目は見られない。

  1. 共生社会の実現:「心のバリアフリー」、「ユニバーサルデザインの街づくり」、「ジェンダー平等」はいずれも14~11%と低め。
  2. 復興/ホストタウンを通じた地域活性化:「東日本大震災被災地の復興」は8.5%、「ホストタウンを通じた地域活性化」は5.2%と、ともに1割を下回り、低評価。
  3. 観光立国・日本文化の発信と理解:「日本文化の世界への魅力発信と文化観光推進」、「日本の食文化の魅力の世界への発信」、「訪日客の受け入れ環境整備」はいずれも13~10%と低め。
  4. セキュリティ・輸送対策:「防災・テロ・セキュリティ対策」(7.4%)は1割を下回り、「大会期間中の安全で円滑な大会輸送と経済活動・市民生活の共存」(11.6%)は1割強と低め。
  5. 健康・スポーツ:スポーツ領域の目標である「スポーツを楽しむこと」は39.6%と、全16項目の中で最も高い。他方、健康領域の目標である「開催地等の暑さ対策や受動喫煙対策」は7.1%にとどまり、両者に開きが見られる。
  6. 持続可能性:「持続可能性への意識を高め生活を変革すること」は4.2%と、16項目の中で最も評価が低い。
  7. 大規模イベント開催のモデル:「最新技術を活用した新たな観戦スタイル」および「大会実施に向けた新型コロナウイルス感染症対策」は2割前後であるのに対し、「アスリート用技術の社会還元」は11.8%と開きが見られる。

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【性・年代別】

総じて、男性に比べて女性で評価が高めである。男性より女性のほうが5ポイント以上高いのは、「大会実施に向けた新型コロナウイルス感染症対策」(8pt差)、「最新技術を活用した新たな観戦スタイル」(6pt差)、「心のバリアフリー」「ジェンダー平等」「スポーツを楽しむこと」(ともに5pt差)である。「ジェンダー平等」は、女性よりも男性で評価が低く、10.6%にとどまる。

性年代別では、全般的に、60代女性、50代女性の評価が高く、20~40代男性、30代女性では評価が低い。20代男性では半数を超える人が「向上・発展したと思うものはない」(50.7%)と回答している。

 

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調査結果2. 東京大会を契機に共生社会の実現は進んだと思うか

「共生社会の実現」について5段階で尋ねたところ、「どちらともいえない」が4割を超えて最も高い中、「進んだと思わない(計)」(31.3%)は「進んだと思う(計)」(26.9%)を上回り、7割以上の人が東京大会を契機に共生社会の実現は進んだと感じていない

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【性・年代別】

60代以上の高齢女性や10代男性で「進んだと思う(計)」との評価が高め(35~39%)である一方、30代女性・20~50代男性で「進んだと思わない(計)」とする人が比較的多い(37~44%)。

 

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2020東京大会までの動き

2013年9月 2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催決定

2020年 1月 WHOが新型コロナウイルスを確認・日本国内において感染確認

2020年3月24日 2020東京大会開催延期決定

2021年3月20日 海外観客の日本への受入れ中止決定

2021年7月8日 東京都で行われるオリンピック競技の無観客開催決定

2021年7月23日~8月8日 第32回オリンピック競技大会開催

2021年8月16日 パラリンピック競技全競技の無観客開催決定

2021年8月24日~9月5日 東京2020パラリンピック競技大会開催

 

調査概要

調査方法    日本リサーチセンター・オムニバス・サーベイ(NOS,定期的に実施する乗り合い形式の全国調査)        

        調査員による個別訪問留置調査
調査対象    全国の15〜79歳男女個人
有効回収数   1,200人 ※エリア・都市規模と性年代構成は、日本の人口構成比に合致するよう割付実施
サンプリング  全国から200地点を抽出、住宅地図データベースから世帯を抽出し、個人を割り当て
調査期間    2022年7月29日~8月12日

   


NOS(日本リサーチセンター・オムニバス・サーベイ)とは

NOSとは、定期的に実施する乗り合い形式(オムニバス)の全国調査です。調査員が、ランダムに決められた地点で対象となるお宅を訪問し、1,200票を回収しています。
インターネットやパネルを使って簡単に調査ができる時代になりましたが、NOSでは50年以上にわたり、サンプリングにこだわって代表性と信頼性の高い安定したデータを収集しています。
複数調査の乗り合い形式のため、単独で実施する場合に比べて費用が割安です。

※ご依頼・ご相談は、ホームページの「お問い合わせ」よりご連絡ください。

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