NRCレポート

ユニバーサルデザイン社会の実現度 定点観測調査

~障害の社会モデルは日本社会にどこまで浸透しているか~ 第2回調査(2018年9月調査結果)
生活・ライフスタイル

公表日 2019年06月27日

日本リサーチセンター(本社:東京都、代表取締役社長:鈴木稲博)は、1960年に設立された民間の調査研究機関です。民間企業および官公庁、大学をはじめとする学術機関などの依頼を受け、各種の調査研究をおこなっています。
 この度、当社の自主調査として、2017年の第1回調査に続き、2018年「ユニバーサルデザイン社会の実現度 定点観測調査 ~障害の社会モデルは日本社会にどこまで浸透しているか~」第2回調査を実施しました。その結果をまとめた調査レポートを発表いたします。

調査実施の背景と目的

 2020年に向けて全国各地で心のバリアフリーを広める取り組み、誰もが安全で快適に移動できるユニバーサルデザインのまちづくりが進みつつあります。弊社では、この間の人々の意識の動き、社会の動きをキャッチし、社会の記録として残していきたいと考え、2017年から2021年までの5年にわたる定点観測調査を企画しました。

調査を通じて、「障害の社会モデルの考え方は日本社会にどこまで浸透していくのか」、「歴史的なイベントである2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会はユニバーサルデザイン社会の実現というレガシーを残すことができるのか」ということを明らかにしていきたいと考えます。


ユニバーサルデザインとは・・・障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず、多様な人々が利用しやすいようあらかじめ都市や生活環境をデザインする考え方です。


障害の社会モデルとは・・・障害は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によってつくり出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるとする考え方です。この障害の社会モデルの考え方が人々にどの程度理解・浸透しているかを知ることによって、ユニバーサルデザイン社会の到達度を知ることができると考え、調査設計しています。

主な調査項目

  1. 障害理解の実態(社会のあり方に関する考え、障害・障害者に対する意識、障害の医学モデル・障害の社会モデルへの賛同状況)
  2. 社会的障壁に接した場面での行動イメージ
  3. 共生社会実現度合評価 

調査結果の要約

障害理解の実態

【2018年の結果】(そう思う計)

社会のあり方に対する考え:共生社会推進への賛同率(93.5%)、ユニバーサルデザインのまちづくり推進への賛同率(89.3%)は9割前後と高い。

心のバリアフリー:障害者への援助行動(77.8%)、仲間に入れることに抵抗感なしとの交流意思(72.8%)はともに7割台と高い。

障害者に対するステレオタイプ:「障害のあることはかわいそうだと思う」(47.6%)、「障害のある人は一方的に助けられるべき存在だと思う」(39.3%)といった障害者に対するステレオタイプを持つ人は約4~5割。

障害の捉え方:障害の社会モデルへの賛同率(障害は、個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によってつくり出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である 68.5%)は7割弱であるのに対し、障害の医学モデルへの賛同率(障害は、病気や外傷等から生じる個人の問題であり、障害の原因を除去・対処するには、治療や訓練等もっぱら個人の適応努力が必要である 30.8%)は約3割。

無関心:障害問題への無関心者は約1割(9.5%)。

2017年から2018年への時系列変化】

    • 共生社会推進、ユニバーサルデザインのまちづくり推進への賛同、心のバリアフリー、障害の社会モデルへの賛同はいずれも2017年~2018年の1年間で有意に増加し、ユニバーサルデザイン社会を実現しようとする人々の意識、心のバリアフリー意識は高まってきているように見える。
    • 一方で、「障害のある人は一方的に助けられるべき存在」、「かわいそう」とするステレオタイプは依然4~5割弱程度存在し、1年間で減少することはなかった。また、障害の医学モデルに対する賛同も約3割程度存在しており、1年間で減少することはなかった。


社会的障壁に接した場面での行動イメージ

混雑したバーゲンセール会場の事例(複数回答の比率)
2018年の結果】

改善責任の認識:「すべての人が安全快適に買い物できる店をつくるのは当たり前のことなので、店はこの状況を改善する必要がある」との、設置者(店)側の改善責任を感じている人は約半数(47.2%)にのぼる。

ハード面・ソフト面による解決:解決方法に関する意見として、「狭い通路の売り場をつくらないようにするのがよい」とのハード面での解決方法(44.1%)、「混雑時は、店側がお客様を順番に少しずつ店内に誘導するなど、誰もが買物できるようにするのがよい」とのソフト面での解決方法(47.7%)がともに4割台で多い。
「近くにいる客として、自分が、車いすや乳幼児連れの人に手助けが必要かを聞き、手伝いたい」と、自身がサポートすることによる解決方法は約3割(28.8%)。

分離による解決:「車いすや乳幼児連れの人は混雑した場所に来ないほうがよい」との考えは13.5%にとどまったが、「一般客とは別に、車いすや乳幼児連れの人専用のエリアや通路を設けるのがよい」という分離による解決策を考える人は35.6%存在した。解決策として分離発想を持つ人は一定数存在し、ユニバーサルデザインの発想が十分浸透しているとは言い難い。

社会への働きかけ:「店舗づくりや施設に関して不備に気づいたら、気づいた自分が店舗に改善提案をしていきたい」との回答率は6.9%。自らが店に改善提案するといった社会への働きかけを表明している人はごく少数にとどまっている。
2017年から2018年への時系列変化】 

自身の援助意欲は上昇、無関心は低下しており、自分が単独で動く範囲での行動意欲については高まりがみられる一方、社会的障壁除去のために社会や他者に働きかける範囲にまで踏み込んだ社会的行動意欲は低下が見られた。

分離による解決意見について、「車いすや乳幼児連れの人は混雑した場所に来ないほうがよい」との極端な分離発想は低下したが、「一般客とは別に、車いすや乳幼児連れの人専用のエリアや通路を設けるのがよい」は35~36%の比較的高いレベルで推移し低下は見られなかった。


共生社会実現度合評価

(0点(全く実現していない)~10点(完全に実現している)スケール)

2018年の結果】
いまの日本社会はどの程度共生社会を実現していると思うかについて、共生社会実現レベル(平均値)は10点満点中4.0点。中央(5点)よりも低い採点者が半数を超え(0~4点計58.6%)、実現レベルの認識は低めである。
2017年から2018年への時系列変化】
共生社会推進に対する賛同者はこの1年で増加したが(2017年88.4%→2018年93.5%)、共生社会実現レベルの評価(平均値)は低水準のまま変化しなかった。

調査概要

調査方法
 NOS(日本リサーチセンター・オムニバス・サーベイ:毎月1回定期的に実施する乗り合い形式の全国調査)調査員
 による個別訪問留置調査
調査対象
 全国の15〜79歳男女個人
有効回収数
 1,200人(サンプル)
 ※エリア・都市規模と性年代構成は、日本の人口構成比に合致するよう割付実施
サンプリング
 毎月200地点を抽出、住宅地図データベースから世帯を抽出し、個人を割り当て
調査期間
 2018年8月31日~9月12日

詳細は、下記PDFファイルをご参照ください。

ユニバーサルデザイン社会の実現度定点観測調査_第2回(2018年)調査レポート.pdf
第2回調査_設問の内容及び単純集計結果テキストファイル.pdf

※この調査結果について、共生社会に向けた研究に関しては、無料で調査データを提供いたします(調査結果を引用等でお使いいただく場合には、弊社名の記載をお願いします)。

NOS(日本リサーチセンター・オムニバス・サーベイ)とは


調査パネルを使ってインターネットで簡単に情報収集できる時代になりましたが、NOSでは、45年以上にわたって、
(1)調査員を使った訪問留置
(2)パネルモニターではない毎回抽出方式
で調査を継続しており、代表性のある信頼の高いデータを提供しております。
NOSは、毎月1回定期的に実施する乗り合い形式(オムニバス)の調査です。毎回ランダムに決められた200地点にて、対象となる方に調査員が協力を依頼してアンケートを回収します。性年代構成を日本の人口構成比に合わせているため、全体結果は日本を代表する意見として、そのままご覧になることができます。インターネット調査では、回収が難しい高齢層やインターネットを使っていない人の実態や意識を分析するのにも有用な手法と言えます。


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